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ばっしゃん! 見事に引っ掛かった。排気ガスの混ざる泥水をまともにひっかぶった彼はもう立ち上がる気力すら残っていない。仰向けに大の字になって、もう降参だと言うように両手を挙げた。
「……オレが悪かった……だからもう勘弁してくれや……」
「それだけ? 謝る態度だけじゃ警察はいらないよね?」
「わ、わかった! 二度としない、盗んだものも返す! だから……」
ここでもっときつーくお仕置きした方が今後のご近所さんのためになるかもしれないが、あくまでこれはお祭りの。ここは手短に大きな一発で終わらせることにしよう。
僕はステッキを左手でくるくると回しながら簡易な召喚呪文を唱える。そして宙に向けて振ると、ばうんっ、とそれっぽい音と煙と共に巨大なカボチャランタンが現れる。粗く削って開けた目と口が蝋燭の光に不気味に揺らめいている。
「言ったね? その約束、破ったらもっとすごいしちゃうから。それじゃ――」
「や、止めろ――」
最後にもう一度ステッキを構えると、青年は頭を抱えてその場にうずくまった。これでしばらく懲りてくれるといいんだけど。それをしっかり確認したうえで僕は止めの魔法をかけた。
「――ハッピー、ハロウィーン!!」
その瞬間、空飛ぶジャックランタンは大爆発を起こして辺りに眩しい閃光を放つ。ただし、音の方は控えめに爆竹一個程度に抑えておいた。
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