Act 2: Midsummer night’s dream

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「いきなり言われてもなあ……踊るのは好きだけどここのことは何にも知らないし。即決はできないよ」 「でもさ、あんな所うろついてて行く当てがあるようには見えないじゃん。素直にうちで働いてくれない? どうせ右も左も分かんないんでしょ」 「それとこれとは別の問題、トウキョウ以外にも行ってみたい居場所があるんだかうおわぁっ!?」 「ちっ、避けたか……」  一方的な要求を僕が断ろうとするとフミエはアイスピックを躊躇なく振り降ろしてきた。獲物を逃がすまいとするヒョウのように完全に据わった眼つきで威圧し、たまらず僕は一歩二歩後ずさりする。自分の顔が引き攣っているのが鏡を見なくても分かる。そこに緊張感の欠片も無いアスカがやんわりと止めに入った。 「商売道具を脅迫に使ったらダメでしょう、文江。そこはネコらしく爪とか牙にした方がいいんじゃないかしら」  ……脅しに関しては問題でないらしい。しかも真顔で火に油を注ぐようなことを言うもんだから、天然ボケの恐ろしさを改めて実感する。このままでは冗談抜きで僕の命が危機に陥りそうだ、早めに白旗を上げないとタキシードに大穴が開きかねない。     
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