Act 2: Midsummer night’s dream

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「分かった! 分かったから落ち着いて……ほら、ここで暴れたらワインもカクテルもこぼれ――いやえっと……前言撤回! 行く当てもないし路銀も無いからここで働かせてくださいごめんなさいゴメンナサイ」 「うーん、そこまで頼むなら雇ったげてもいいかなー? その代わり給料はやっすいよー? それでもいいのかなー?」 「は、はいッ!! 構いませんから……タスケテ」  五体投地で何度も助命を請うた末にやっと脅しから解放され、不本意ながら雇用契約を結んでしまった。こんなやり方で強制するなんてなんて横暴な店主なんだ。 「オーナー、そろそろ乾杯の音頭を」  そうこうしているうちに楽団全員が楽器を片付け終わり、それぞれの手にグラスを持って遠巻きに僕らのやり取りを見ていた。憐れみの視線を感じるのは気のせいだろうか。 「そうだったわ。ちょうど新人も入ったことだし、その歓迎も兼ねて……おほん、乾杯!」 『乾杯!!』  ふんわりとしたアスカの掛け声と共にグラスをぶつけ合う音が次々と鳴る。そしてすぐに談笑の花が一斉に咲き、店内はにぎやかなパーティー会場に変わった。いつの間にかフミエも楽団員の輪に入っていて、まだシャンパンに口を付けていないのにウサギのピアニストへ早速絡んでいた。     
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