数え切れないほどの薔薇の花束を

2/37
前へ
/37ページ
次へ
Side N なぁ千晃。 俺は絶対にまたお前と出会える自信があったよ。 まさかこんな形でとは思わなかったけどね。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 彼女がグループを卒業してから1年後、行きつけのジムで見覚えのある姿を見かけた。 あの背中を見間違えることなんてない。 何度見ても飽きることなんてなかった小さくて華奢な背中。 彼女が振り返ったとき、彼女の瞳に自分が映った気がした。 気のせいなんかじゃない。 なのに彼女は何事もなかったかのように準備を整えて出て行く。 その後を慌てて追いかけた。 西「ちあき」 立ち止まった彼女は静かにゆっくりと振り返った。 まるで気づかないふりを諦めたかのように。 千「にっしー!久しぶり」 白々しくまさに今気づいたかのような仕草で笑っている。 それについて言及しようか迷ったが、あえてその嘘に騙されることにした。 どこまでいっても自分は彼女に甘い。 西「ひさしぶり」 この笑顔を真正面から見るのは一年ぶりだ。 そうだ、もう一年も見ていなかったのだ。 西「元気にしてた?」 千「うん」 西「赤ちゃん、おめでとう」 そういえばまだ言えていなかった。 メールすら送っていない。 彼女がグループを抜けた時から一切連絡を取っていない。     
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加