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彼女が背中を向けた瞬間なぜか猛烈に置いていかれたような寂しさが襲いかかった。
思わず声をかけていた。
西「なぁちあき」
何を言うつもりなのか自分でもわからない。
千「ん?」
彼女が振り返る。
西「次からは無視しないでよ」
言うつもりのなかった言葉が口をついて出た。
千「、、、なにが?」
とぼけるのも嘘をつくのも下手なくせに。
動揺を隠しきれていない彼女の顔を見て思わず笑みがこぼれてしまう。
西「あれ結構傷つくよ」
あえて彼女の問いを無視するという意地悪を仕掛ける。
でも最初に意地悪をしたのは彼女の方だ。
もちろん意図的ではないだろうが。
千「、、ごめん」
西「それに気づかないふりなんて似合わないことするなよ。
嘘下手なくせに。」
千「ちょっと!下手って言うな!」
むくれたような顔の彼女が懐かしくて、それでいてまぶしかった。
西「、、、またね」
千「ん、また」
西「ちあき、
今しあわせ?」
千「ふふっ
見て分からない?」
すっかり母親の顔をして口元に手を当てて笑う彼女。
もう彼女の柔らかい小さな手を守るのは自分じゃない。
そんな些細な事実にいちいち傷つく。
心だけは一人前に嫉妬して。
西「不幸でいてほしいっていう俺の願望かな。」
小さなため息とともに本音が溢れ出る。
千「、、、」
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