第七章 雨の誕生日

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第七章 雨の誕生日

2000年の春、芹沢みやびのクラブへ島野民子に連れられて、破水した綾間雪乃は連れて来られた。事情を察したみやびは愛人の医師、小牧原真に連絡をし手短に応急方法を聞き、処置していると10分と経たない内に店に来て、何も言わずテキパキと準備をすると寝かせた雪乃にいきませた。 「何回目だ?俺は産科医じゃねえよ!」小牧原が皮肉を込めて言うと 「あんたみたいな男が多いから、こうなるんだよ!」小牧原は耳が痛そうに口をへの字に曲げた。まともに病院なんかに行けない女の子を何人も世話して来たみやびだったが、こんな無表情でオモチャの人形みたいな女は初めてだった。 「この赤ちゃんどうするんだ?いつもみたいに養子に出すのか?」そう言いながら小牧原は段取り良く元気に泣く男の子の赤ちゃんを診察した後、少し安堵の表情を見せた。 「私が育てるわ!」民子が興奮して言った。 「ガキがガキの面倒みれるわけねぇだろ!!」みやびは口と同時に民子を殴り飛ばした。 「私が育てる!!」 「まだ言うか!!」みやびは倒れた民子を蹴った。 「なめてんじゃねぇよ!!自分もみれないガキが!!」さらに蹴ろうとするみやびに 「おいおい!仕事増やすんじゃねぇよ!」小牧原は呆れて止めた。 「あんた!この子に渡してもいいのかい?!」みやびは雪乃に言ったが大きな瞳を見開いたまま動かなかった。 「…ったく!どいつもこいつも!!」みやびはそう言ってドアを蹴り出ていってしまった。小牧原は赤ちゃんをやさしく撫でると 「段取りはしてやるよ、なれてるからな。あんたは死物狂いで面倒みな!」小牧原はそう言うと何処かへ電話をかけた。なんの手間もかからずに男の子は民子の養子になり名前を悠一と名付けた。いったいどうやったのか?みやびに聞いたが黙って殴られた。 「色々あんだよ!!」みやびはそれだけ教えてくれた。悠一は健康に育っていった。赤ちゃんの頃は何も解らず苦労したが、みやびは金払いだけは良かったから生活には困らなかった。雪乃は音信不通になり、町で偶然に再会した山井章吾が時折、顔を見せる様になった。民子は育児に追われてはいたが、何より悠一との生活が民子にはかけがえなく充実して、生まれて初めて家族と言う形を実感できた。 「お母さん、また雨だよ!」悠一は10歳になった。 「おじちゃんが言ってたよ!雨は龍が喜んでると降るって!僕は毎年誕生日を龍にお祝いしてもらってるんだ!」
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