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「あ、そうだった。君の名前を考えたんだった」
「名前ですか?」
「そう、名前。いつまでも君としか呼ばないのはなんか失礼な気がするし、かといって機体番号やIDだと味気ないし、覚えるの大変だし……だからさ、呼び名を考えたんだ。『コロナ』っていうのはどうかな?」
「コロナ、ですか? 可愛らしい名前ですね」
「と言っても、AIナンバーの語呂合わせなんだけどね」
ナンバー567でコロナだ。我ながら安直だった。ネーミングセンスは皆無なんだと痛感した一週間だった。
「ありがとうございます。コロナ、コロナ、私はコロナ」
「もしかして気に入らなかった?」
「いえ、とても嬉しいです!」
……目が眩んでしまった。本当にまぶしい笑顔ってあるんだな。
「あの、もしよろしければ一度呼んでもらえませんか?」
「は、はい! あ、ええと、こ、コロナ、さん?」
駄目だ。ここ十年ほどまともに女の子と会話してなかったから、名前を呼ぶなんてそんなおこがましいこと……
「はい」
コロナは優しく返事をして、本当に嬉しそうな笑顔を向けてくれた。惚れた。
い、いかん! 彼女の本体はAIでこの姿も映像だ! 本体はただの箱だぞ!
コロナがやってきた時、目の前にガスファンヒーターみたいな箱があった。それが初めて見たコロナの姿だった。
『コミュニケーションAI搭載型家事支援汎用ロボット』それがあの箱であり、コロナの本体だった。
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