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青空を見て少し元気になった夏子は、部屋に戻り落ち込んだ。
淀んだ空気に散らかり放題の部屋、悪臭は明らかに黒猫の粗相のせいだけでない。
「酷い有様ね……」
夏子はそう呟くと、破れた服と黒猫が粗相した雑誌をゴミ袋に入れて外へ。
ついでに黒猫も出そうと試みたが、やはり逃げ回る。
ゴミを捨てて部屋を換気すると夏子は睡魔に襲われ、ソファで眠った。
夏子は夢を見た。
真っ白な空間のど真ん中、大量のゴミが積み上げられ、その上には男がいた。
男は黒のシャツに黒のスラックス、黒髪と黒ずくめの出で立ちをしている。胸元には緑色に光る石がついたネックレスが目を引く。
(性格悪そう……)
夏子は男を見るなり第一に思ったのはそれだった。
男は鋭い目付きが印象に残る悪人ヅラだ。
男は夏子に気づくと、ひとっ飛びでゴミ山から夏子の前へ。
男の近さと迫力に、夏子は思わず息を呑む。
近くで見ると案外顔立ちが整っている事に気づくが、皮肉屋の印象は消えない。
「いつまでこんなゴミ山に燻ってるつもりだ?」
少し掠れた低い声で、男は言う。
「昔住んでた路地裏の方がよかったぜ。アンタの部屋は路地裏以下だ」
男は喉をクツクツ鳴らして意地悪く笑った。
「路地裏、以下……?」
悔しさと怒りで震える夏子を男は嘲笑う。
「震えるほど悔しいなら見返してみろ。じゃあな」
男は夏子に背を向けて片手を振ると、ゴミ山に消えていった。
夜風で冷えた部屋、夏子は目を覚ました。
隣では黒猫がすました様に座っている。夏子は黒猫をじっと見た。
緑色の目が、男のネックレスと似ている様に思えた。
「あれは君だったの?」
黒猫は夏子の問いに答えず、ただただ毛繕いをするだけ。
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