ep.1 たまには精神操作でもいかがです?

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病室の前の廊下で、俺と鹿野灯矢の母親は二人を見守っていた。 「能力がまだ発現するようでしたら、何度も口に出して、愛してると伝えることです。何度も灯矢くんにもわかる形で。」 「…ありがとうございます。」 「一応これも渡しておきます。」 俺は母親に外国のロゴが入った紙袋を手渡した。 「能力の精度を下げるお香です。日本じゃ売ってないんですが、足りなくなったらネットで探せば安く買えますよ。」 「あの…何かお礼を…。」 「いやいや、商売じゃないんで。大学の研究を手伝ってるだけの身なんで…」 「お金で無くてもいいですよ。あなたは…灯矢の…私達の恩人なんです。」 「そう言われてもなぁ…う~ん…あ。じゃあ…」 帰りの電車。 田舎の電車ってのは、夜になると外が真っ暗でつまらない。 大学に戻って報告書をまとめなきゃいけないし…憂鬱だ。 子供って言うのは結構小さな事でも悩むもんだ。 いや…彼にとってはきっととても大きいものなんだろう。 たまには大人も、子供にあわせなければならない時もある。 寄り添わなければならない時もある。 CDプレイヤーを持ってきてて良かった。 お礼でもらったリバティーンズやストロークスのCDも… 俺の憂鬱な気分に寄り添って歌ってくれる。 No1.鹿野灯矢 能力名:グレートデイズ(命名:失慰イノ) 種別:観察系 終事効果型 失ったモノ:お父さんからの愛 能力者本人が自分の事を愛してると確信した人物が対象となる。 命令を言ったのち「お願い。」と発すると対象者は無意識に命令を遂行する。 その間は意識は飛び記憶もしないため、対象者は記憶を失くしたと思いこむ。 失ったモノを得た為、能力消滅。 …おそらく。
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