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沖田かなは明らかに嫌な顔をした。
深く聞かない事にしよう。
とにかく食事と排泄をしているなら死んではないだろう。
俺と沖田かなはリビングへ移り、今回の状況について語る事にした。
まずは俺と言う人間と、世の中にある異形の能力について…
「俺はロストマンだ。」
「ロストマン…特殊能力者ですよね?海外のニュースとかでたまに見ます。」
「日本人には少ないからね。今回の君のお母さんの件も、ロストマンの影響を受けた可能性は大きい。」
「母が、ロストマンになったという事ですか…?」
「それはわからない。誰かに何らかの能力をかけられた可能性もある。」
「…ママが…」
さっきは「母」と呼んでいたと思ったけど…
普段はママと呼んでるらしい。かわいい。
…失礼。失言だ。不謹慎だ。
「『大切なモノを失って、ひとつ人智を超えた者』なんて言葉がある。能力を手に入れた人間はそれ相応の対価を失う。だからロストマン(失った者)と呼ばれてる。」
「対価…」
真剣なまなざしで、彼女は俺を見てる。
彼女の中で思う事があったのだろう。
「さっき、お父さんを亡くしたって言ってたよね?」
「はい…」
「ロストマンの能力は、失ったモノに影響される。君のお母さんは、お父さんを失ったことで『意識を失くし、体重を重くする』能力を持ったんじゃないかと思ってる」
似たようなケースはたくさん見た事がある。
大切な人が死んでしまったり、動けなくなったり…
そうして発現したロストマンの能力は、同じように何かを『動けなくさせる』モノが多い。
「そんな…」
「まぁ仮説だけどね。現状を見ただけでは確定できない。あくまで仮説。」
「元に…戻すことはできるんですか?」
「アレが君のお母さんの能力なら…方法は3つある。」
「教えてください…。」
「一つは、『失ったモノ』を取り戻すこと」
「それって…」
「あぁ、君のお父さんを生き返らせることなんて出来ないからね。これは不可能だ。」
「…」
「二つ目は、君のお母さんが自分で能力を解除する。」
「できるんですか…?そんなこと」
「自分で解除出来るタイプの能力なら可能だ。けどこれも確実な方法とは言えない。」
本人が苦しいのであれば自分で解除してるはず。
つまり『自分で解除できない能力』か『条件を満たさなければ解除できない能力』…。
あるいは本人が『解除する気が無い』。
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