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「そしてもう一つは、俺の能力を使う。」
「…イノさんの…」
「俺もロストマンなんだ。ロストマンから能力を奪う事が出来る。そういう能力を持ってる。」
「…能力を奪う…。」
もっと喜ぶと思ったけれど…
イマイチ想像付かないのか。
結構凄い能力なんだけれど…
「…お母さんからも能力を奪えるって事ですね?」
「能力者の名前と…能力名があればそれも必要になるけどね。だけど、出来ればやりたくは無い。」
「どういうことですか?」
「俺の能力で力を失ったロストマンは…さらに何かを失う。」
「それって…」
「何を失うかは俺にもわからない。」
「…そんな」
「解決方法が別にあるならやめたほうがいい。まずは話を聞きたい。君のお母さんに起きた物語を。」
和室にベッド。
よく考えればそもそも変な光景だ。
それがあまり気にならないのは、変わり果てたベッドのせいだろう。
俺は部屋を閉めきり、皿にお香を乗せて火をつける。
それらをベッドの周りに置いていく。
「この煙。何なんですか。お香?」
「ロストマンの力の精度を下げる効果があるんだ。効き目があるかはわからないけどね。」
ダストというエネルギーがある。
空気中に存在し、ロストマンはそれを使って能力を発動させる。
能力を発動すると光を放つ性質があり、ロストマンにとってのガソリンだ。
このお香『ピケ』は火を付けるとダストの活動を抑える煙を発し、ロストマンの能力の精度を下げる効果があった。
しかし今回の場合は気休めにしかならないだろう。
『ピケ』はあくまでダストの活動を抑えるもの。
すでに残された結果を和らげる事は出来ない。
…
出されたのは苦手なブラックコーヒーだった。
「うお!おいしいなこのコーヒー!!こんなの美味しいの飲んだことないなぁ!」
「…」
「へ…部屋もきれいに片付いてるし!いい奥さんになれるよ!」
「…」
話をするために案内された部屋は沖田かなの部屋だった。
可愛らしい服がかけてあるクローゼット。
momoという少し前話題になっていたシンガーソングライターのCD。
女子高生らしい部屋。
しかし下着が平気で干してあったりして、俺はあきらかに動揺してた。
それを隠そうと変な感じになっているのは言うまでもないだろう。
「あの、私は何をお話すればいいのでしょうか。」
「えっと…父さんが亡くなってから今日まで、ざっくり話してもらえる?」
「はい。」
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