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それでも娘のためにしっかり家事はこなしてたのか。
母親ってのは強いな。
「いいお母さんなんだね。」
「……はい。」
沖田かなは少し照れくさそうに笑う。
父親が死んで、母親は原因不明の昏睡状態。
女子高生の女の子には…この状況は絶対に辛い。
沖田かなは凛としている。
母親に負けず強い女の子なんだろうな。
…
その後も色々調べたが何も出てこず。
気づけば夜になっていて、沖田かなに誘われ夕食にお呼ばれする事になった。
「お金は…いくら必要なんでしょうか…?」
「…いや今回は平気だよ。報酬はもらってないし、かかったお金も交通費くらいだし。」
「…なら交通費だけでも…私アルバイトしようと思ってるんで。」
「そうなの?」
「まだ決まってないんですけど…」
「気が向いたら俺の研究室でも助手探してるよ。」
沖田かなは明らかに落ち込んでいる。
「…あの…」
「ん?」
「私…怖くて聞けなかったんですけど…ロストマンの力は…失ったモノに影響されるんですよね?」
「そうだね…今回の場合は君のお父さんの死に影響を受けている可能性は大きいと思うよ。」
「…」
「どうしたの?」
「母が…あんな能力を身につけたのは…父のあとを追って…」
沖田かなのよくない想像。
母親も、父親のあとを追って死にたいと望んだのではないか。
つまりあの能力は、自分を死に追いやるための能力なのではないか。
「大丈夫。」
「…」
「君のお母さんはそんなに弱い人じゃないよ。」
「…はい。」
すこし濁っていた彼女の表情が楽になった気がする。
この子は本当に両親が大好きなんだな。
ロストマンの能力は、自分の欲望を叶えるためのものがほとんどだ。
本当に「死にたい」と思っているのなら…あんな回りくどい能力にはならない。
『体重を重くする』『目を覚まさない』事で、沖田・母は何かの欲望を叶えたんだ。
それが何なのかがわかれば…
「イノさんは、ずっとこのお仕事をしてるんですか?」
「3年くらい前からかな。その前はずっと世界中をまわってた。」
「旅…?イノさん今いくつなんですか?」
「21だよ。13歳から5年間…ある人達に連れられて色んな国へ行ったよ…アメリカ…フランス…シリア…それに……ソマリア」
世界中のたくさんのロストマンと出会った。
もう…3年か。
「イノさん。」
「ん?」
「あの…よければ…今日…泊っていきませんか?」
「…!?」
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