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夏も終わりかけだと言うのに汗はだらだらだ。
太っている人には優しくしようと思った。
ピンポーン
沖田家のチャイムを鳴らす。
電話で俺の状況を伝えてあった沖田かなは、すぐに家へ入れてくれた。
「イノさん。一体どういうことなんですか?」
俺は出された麦茶を一気に飲みほし、呼吸を整えた。
うまい。
「俺の今の体重は…120キロ近い。」
沖田かなが心配そうに見てる。
「もし君のお母さんに起きている事が俺にも起きているなら…2つわかった事がある。」
「わかったこと?」
「順を追って説明するね。まずはこれを見て欲しい。」
俺は彼女にとある紙を見せる。
これは昨日からの自分の体重の記録だ。
「一時間おきに自分の体重を量ってみた。これは今日の朝の分」
AM5:00 [119kg]
AM6:00 [118kg]
AM7:00 [117kg]
AM8:00 [119kg]
AM9:00 [118kg]
「118キロから上下してるけど大きな増加は無い。昨日も計ってみたけど同じような結果になった。」
「これって…」
「このデータから、体重の増加に時間の経過は関係が無いということがわかる。」
そう。
俺の体重は昨日の朝から30時間以上経過した現在でも大きく変わる事はなかった。
つまり、沖田母の体重がどんどん増えていくのには時間経過とは違う理由がある。
「そしてもう一つ。俺と君のお母さんには決定的に違う点がある。」
「決定的に…違う…点?」
「俺は君のお母さんのように意識を失っていない。」
沖田かなの母は意識を失っている。
いわゆる昏睡状態というやつだ。
しかし俺は違う。
身体が重いせいでむしろ目が冴えたくらいだ。
「…たしかに。」
「結論から言うね。」
「…はい。」
「この能力を使っているのは、君のお母さんじゃない」
沖田かなの表情が変わる。
「君だ。」
少しの沈黙。
沖田かなの表情は驚いてはいるものの、穏やかだった。
すぐに受け入れたのか…
それとも思い当たる節があるのか…
現状はあくまで仮説だったが、俺は確信を得た。
まずは証明する必要がある。
「昨日食事しているとき、目がチカチカすると言っていたね?」
「…はい」
「それはきっとダストによる発動光だ。俺も…君が光を放っているところを見た。」
あの時はあまりの可愛さに光っているように見えただけかと思ったが…
女慣れしてないことが仇になった。
俺、カッコ悪い。
「ダスト…?」
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