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「ロストマンの能力の源となるエネルギーだ。普段は空気中をホコリのように漂っているだけだけど、能力を発動する時に光を放つ。普通の人には見ることは出来ない。」
「…」
「おそらくその時、君は俺に能力をかけたんだ。無意識に。」
「…そんな。」
「君は昨日、俺が帰ろうとした時に引きとめたね?どうして…?」
「それは…早くお母さんをよくして欲しいから…」
「きっとそれは違う。本当は寂しかったんじゃないのかい?」
父が死んで母親は昏睡状態。
彼女はこの緊迫した日々をもう2カ月以上も続けてる。
彼女は学校に友達がいないと言っていた。
久しぶりに他愛もない会話をしたとも言っていた。
きっと誰でもよかったんだ。
当たり前の日常を思い出せるくだらない話をする相手が欲しかった。
くだらない話をする相手もいないなんて…
寂しいに決まってる。
「…」
「仮説だけど…この能力は君が誰かと一緒にいたいと願う事が発動条件なんだ。」
父を失い、みるみるやつれていく母。
お母さんもどこかへ行ってしまうんじゃないかという不安。
「どこへも行かないで」という彼女の願いがこの能力を生み出した。
想いが強くなるほど能力は強くなる。
出会ったばかりの俺ですら2倍近くの体重にする能力だ。
それが母親ともなれば…身体が重くなるだけじゃない。
意識を奪うほどに重い想い。
「かなちゃん。ここからの話が重要だ。」
「…」
「もし今の仮説が正しいのであれば、この能力は君の感情に依存してる。」
「私の…感情…」
沖田かなの声は震えている。
「そう。強く願えば願うほどこの能力は強くなる。ならば君がお母さんを解放したいと思えば、この能力は解除できるかもしれない。」
「…解除…」
「あぁ。君は運がいいよ…実験台もここにいる。」
「イノさん…。」
「まずは俺にかけた能力を解除するんだ。君ならきっと出来る。」
正直…半信半疑ではあった。
なぜなら一度効果を発動すれば、目的を達成するまで解除できない能力も存在するからだ。
しかし彼女が永遠に母親をあんな状況にしたいと願うはずは無い。
きっと大丈夫なはずだという…この子はそんな子じゃないという…
俺のそんな想いもあった。
俺は沖田かなの手を握った。
「かなちゃん。ゆっくり落ち着いて。」
「…」
「俺でよければ、いつだって話相手になる。」
「イノ…さん…」
「お母さんのために…なにより君自身のために…」
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