ep.2 たまには重い女でもいかがです?

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「…」 初めて話したときの刺々しい態度はここにはなく。 俺を見つめる彼女の目は恋をしそうになるくらい… 「君はひとりじゃない。」 沖田かなの身体がふわっと光る。 美しさと錯覚するくらい綺麗な光。 ダストの光。 俺の身体の重さも嘘のように軽くなる。 沖田かなは泣いていた。 色々と思うところがあったのだろう。 「かなちゃん、お母さんを元に戻そう。」 … ママは恋する乙女のようだった。 「パパ今日も素敵ね。かな、パパって世界一スーツが似合うと思わない?」 「似合ってると思うよ。」 「いやぁ、2人ともそんなに褒めないでよ。じゃあパパは仕事に行ってくるね。」 「いってらっしゃい。」 娘の前でもイチャつく2人。 どんな場所でもノロケる夫婦。 「本当にバカね」と思いつつ。 そんな2人を見ているのが大好きだった。 パパが死んじゃったとき。 泣き崩れたのはむしろ私の方で… そんな私を強く抱きしめたママは、決して泣かなかった。 「パパは、かなの泣いてる所見たくないと思うよ。ほら、笑え。笑え。」 いやってほど泣いて、喉が痛くなるまで叫んだ。 やっと落ち着いた私の顔をつまんでママは… 「あんた今すっごい不細工。せっかく可愛く産んであげたんだから、ちゃんと可愛くいなさい!」 そう言ってにっこりほほ笑んでくれた。 その笑顔に、私はとても救われたんだ。 私はママを尊敬した。 私よりも絶対に辛いはずなのに、なんて強い女性なんだろうと… ママは…パパや私のために泣かないんだ。 そんなママが、私は何よりも誇らしかった。 パパのお葬式の日 「旦那さん、残念だったね。奥さん大丈夫かい?」 「平気ですってば!私より辛気臭い顔しないでくださいよ!」 「大変だったねぇ。何かあったらいつでも頼っとくれよ。」 「ありがとうございます。むしろご迷惑をおかけしてすいません。おば様こそ何かあったら話してくださいね!」 ママは明るく親戚の人と話していた。 私もママを見習って、いつまでも泣いてばかりじゃ駄目だと思いはじめてた。 お葬式のあと家に帰って私達はすぐに眠った。 思った以上にお葬式って疲れる。 なんか寝付けなくってリビングに行った時… わたしは見ちゃったんだ。 タンスに掛けてある… パパのお気に入りのネクタイの前。 あんなに強いママが… 身体を震わせて泣いていた。 平気なはずないじゃん。 悲しくないはずないじゃん。
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