ep.3 たまにはミルクでもいかがです?

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ep.3 たまにはミルクでもいかがです?

かなちゃんとの出会いから1週間。 俺とかなちゃんは桜乃森大学に来ていた。 俺が研究を手伝っている『異能力研究室』。 そこでかなちゃんが俺の助手としてバイトすることになったからだ。 「あら。彼女?」 「違います。」 「初めまして。沖田かなです。」 「あぁ、あなたがかなちゃんね。初めましてこの研究室の室長、化乃麻衣(あだしのまい)です。」 麻衣さんは日本でも数少ないロストマン研究の第一人者。 見た目は若いけどおそらく20代後半。 一度も年齢を教えてくれた事は無い。 スタイルが良く、色っぽい顔つきをしているので男子学生からは割と人気らしい。 性格はかなり適当。酒癖と男癖が悪い。 「イノさんは…この大学の学生なんですか?」 「違うのよ。そいつはただのニート。」 「麻衣さんの研究手伝ってるでしょう。せめてフリーターと呼んでください。」 「同じようなモンじゃん。かなちゃん、紅茶と緑茶どっちがいい?」 「すいません。おかまいなく…」 「いや麻衣さんからもかなちゃんに言ってくださいよ。やめたほうがいいって。」 「別にいいじゃん。人数多い方が楽しいし。危険な案件には連れて行かなければいいじゃない。」 「そうですけど…」 「ちゃんとお給料も出してあげるからね。」 「ありがとうございます!」 俺がノリ気じゃない理由は色々ある。 1つは、俺たちのやることが他人のトラウマに深く入り込む必要があるということだ。 人間の見たくない部分とか… 納得できない結末になることだってある。 かなちゃんがそれらに耐えることができるのか… 俺にはまだわからない。 「私…初めてなんです…こんなにやりたいって思えることに出会ったの。」 「かなちゃん…」 「私はイノさんに助けられました。私が直接できることは少ないと思うけれど、力になれるならなりたいと思ったんです。」 かなちゃんは、今まで部活に入った事もないらしい。 やりたい事を見つけるのがとても苦手なんだそうだ。 まぁ、少しでも興味のある事ができたのならそれは素晴らしい事だと思う。 けれど… 「土日とか休日だけになりますけど、これからよろしくお願いします。」 「よろしくね。」 「…」 「イノ。なんか言いなさい」 「…よろしく。かなちゃん。」 「はい!」 トゥルルルル 麻衣さんの研究室の電話が鳴った。 麻衣さんはよく研究室で電話をしてる。
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