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辛うじて形をとどめているものもあるが、それがむしろ不気味だった。
ひどい悪臭はどうやらそれらが腐ったことが原因らしい。
ちらほら虫もわいている。
「とにかくあの子を保護してくる。お前は本庁へ連絡をいれろ。」
「そ…そうだな。」
警官の一人が外へ出て電話をしようとした時。
「う”ぅぅッ!!!」
同僚の鈍い叫び声。
振り向くとさっきまでそこにいたはずの同僚姿は無い。
ふと視線を床へ向けると…
「ひっ!」
さっきまで話していたはずの同僚は…
下半身だけを残し、白くドロドロに溶解していた。
上半身は既に形を失っていたという。
「うぁあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
その後やってきた警視庁からも人員が到着する。
しかし誰ひとり状況を把握する事ができず、現在も調査中。
命を落とす危険があるため部屋の中には誰も踏み込む事ができない。
状況からロストマンが関係していると睨んだ警察は、専門家である麻衣さんに協力を求めたのだった。
…
アパートの住人は白石美香、24歳。
職業は看護師だそうだ。
警察からの情報はわかりやすくて助かる。
白石美香のアパートの下には、数代のパトカーが停まっていた。
赤いランプが点灯していたので近くを通った俺たちはすぐにここが現場だとわかった。
学校の名前が入ったダサい軽自動車から降りると、直ぐに数名の捜査官が近寄ってくる。
「警視庁の保坂です。桜乃森大学の方ですね?」
ビシッとした若い警官が警察手帳を見せて来た。
さわやかなイケメンだ。憎たらしい。
「化乃麻衣の代理の者です。俺は失慰イノ、こっちは沖田といいます。」
「ご足労ありがとうございます。現場へ案内します。」
俺たちの若さに驚いてはいたが、特に何も言われない。
見た目で判断しない、良き大人だ。
白石美香の部屋はアパートの3階。
部屋の前には複数の警察官がいる。
ドラマで見覚えのある黄色いテープとロープで一般人が立ち入れないようにしてる。
「原因もわからず困っています。中に入った警官の話は?」
「聞いてます。上半身が溶けてしまったと。」
「はい。しかし正確には溶けているわけではありません。」
「どういう事ですか?」
「これを見てください。」
保坂さんが一枚の紙を見せてくれる。
見方はよくわからなかったが「ここを見てください」と指を指してくれる。
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