ep.3 たまにはミルクでもいかがです?

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「部屋の中に溢れているドロドロの白い物質の成分を調べたものです」 「タンパク質…脂肪…糖…カルシウム…カリウム…これは?」 「警官だけでなく…冷蔵庫や時計、すべてこの物質に変わっています」 なるほど…冷蔵庫や時計は無機物だ。 溶けたら鉄やプラスチック、樹脂なんかの成分になる。 つまり溶けているわけではなく、この物質に『変えられている』ということだ。 けど…一体何なんだこれ。 「えっと…赤ちゃんの両親は?」 「ここに住んでいる白石美香は半年前に離婚していて旦那さんはまだ見つかってません。白石美香の職場に問い合わせても3カ月前から突然連絡が取れなくなっていて、両親ともに行方不明という状態なんです。」 父親も母親も行方不明… 残された赤ちゃん。 「それにあの赤ちゃんについてなんですが…」 「なんです?」 「近辺の産婦人科で調べても出産記録が残されておらず、役所に出生届けも提出されていません。」 出生届けが出されてない? 「白石美香さんの子供じゃないってことですか?」 「いえ…彼女の職場の同僚がお腹が大きくなっている白石美香を見ています。記録がないので証拠はありませんが…おそらく本人の子供かと。」 出産の記録がない…? 周りに妊娠していることを言って無かったのか? あまりにぶっとんだ状況。 これは警察も混乱するな。 「イノさん…」 ことの深刻さを理解したかなちゃんが俺に問いかける。 「この能力のロストマンは…誰なんでしょうか…?」 「今の状況だけだとあの赤ちゃんだけど…」 まだ母親や第三者の可能性も十分ある。 「かなちゃんはどう思う?」 「お母さんが赤ちゃんを守るために能力を使ってるんじゃないでしょうか。」 捨てきれない可能性だ。 遠くに離れていても発動する能力もある。 しかし赤ちゃんを守っているだけだとしたら… 家の中のものにまで能力の影響がでるのはおかしい。 「保坂さん、中を見ることはできませんか?」 「換気口から中を覗くことができます。こちらへ…」 ドアの横にある換気口は、フタが外されて中が見えるようにされていた。 おそらく警察が外したのだろう。 俺は下の段差に足を掛けて中を覗く。 「うっ…」 ひどい臭いだ。 中の様子が全て見渡せるわけではないが… かろうじて赤ちゃんの眠るベッドが見える。 そして… 「!」 赤ちゃんのベッドの横に、裸の女性が立っていた。
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