ep.3 たまにはミルクでもいかがです?

6/11
前へ
/219ページ
次へ
「あの物質に近いもののリストです…。乳タンパクが含まれていることから、母乳が最も近いですね」 母乳… 「イノさん!」 換気口から中を見ていたかなちゃんが俺を呼ぶ。 中で何か動きがあったようだ。 「どうしたの?」 「赤ちゃんが…泣き始めちゃったみたいで…」 俺はかなちゃんと場所を変わり、換気口から中を覗いた。 「…」 赤ちゃんが大きい声で泣いている。 お腹が空いたのか…それともトイレか… あの子のことを考えるとすぐにでもここを出たほうがいい。 そんなことを考えていると ダストで作られた女性が動き出した。 「…!」 俺は…彼女に目を奪われた。 女性は、さっきまで無かったはずの何かを手に持っている。 おそらく実在するものではなく、あれもダストで作ったものだ。 指の形から注射器のように見える。 しかし、俺はそれを危険だとは感じなかった。 なぜなら、注射器を持つ女性のその姿が、あまりにも美しかったからだ。 赤ちゃんへほほ笑みかけるその瞳が、あまりにも優しかったからだ。 女性は赤ちゃんへ優しい頬笑みを向ける。 赤ちゃんの横にあるぬいぐるみに注射器を刺す。 するとそのぬいぐるみが例の白い物質に変化した。 彼女はそれを手ですくって赤ちゃんの口元へ運んでる。 気づけば赤ちゃんは泣きやんでいた。 「…」 俺は無意識に見とれてしまっていた事に気づいて視線を離した。 なるほど…そういう能力…か。 なんて… 俺は換気口から離れた。 「保坂さん。」 「…はい。」 「ここは俺にまかせてください。」 「中に入るという事ですか?許可できません…私も外国にロストマン・ハンターの知り合いがいますが、手のつけようのない能力者もいるのでしょう?」 ? やはり警察の人だ。 外国のロストマンとのパイプもあるらしい。 外国に知り合いがいるってのは、珍しいけど… 「俺じゃないと、多分何人か死ぬ事になります。」 「…。」 「この能力を使っているのは…あの赤ちゃんです。」 何人かは気づいていたのか、あのかなちゃんでさえ。 誰も驚いた様子は無かった。 「あの能力はこれ以降『プラグイン・ベイビー』と名付けます。」 「プラグインベイビー…」 「ダストで女性を具現化する能力です。女性は注射器を持っています。」 「注射器!?」
/219ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加