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「もしもし…あたし産んだからね!ちゃんと母親になったんだから!ねぇッ!聞いてる!?」
「クスリ…注射器…かずま…きっと2人でも幸せになれるよね…」
「すいません…1カ月…ほど…休ませてください。いえ…はい…はい…では…。…お金…どうしよう…」
あぅ、あぁ
「かずま…ごめんね。わたしおっぱい出ないみたい…」
「愛してるよ…なんで…なんで…ちっとも泣きやまないの…?」
おぎゃぁっおぎゃぁっ
「うるさいんだよ!なんで私ばっかり責められなきゃいけないんだよ!」
「もう…お金なんて…ないんだよ…あんたを生んだせいで…卓也にも逃げられて…」
「食べる物はもうないんだよ…!これは私のクスリよ!たべものじゃねぇんだよ!」
おぎゃぁっおぎゃぁっあああッ
「うるせぇんだよ!だまれよ!そのまま泣いてろよ!」
「…何よ…なんで部屋の中…こんなになってるの?あんた一体何をし…ーーーーー」
…
部屋は静かなものだ。
ガムテープで密閉された部屋は薄暗く、お香と腐敗物の匂いで満たされている。
玄関に置かれた粉ミルクの上に「かずま用」と書かれたメモの切れはしが置いてあった。
それがおそらく…赤ちゃんの名前。
白石かずま。
汚物まみれの掃除されていない不潔な部屋。
生後間もない赤ちゃんがいていい場所じゃない。
人間がいていい場所じゃない。
俺の瞳孔は開いていた。
悪臭に鼻を抑える事も無く、目の前に集中する。
数メートルの短い廊下は、心の準備をするためにはあまりにも短かった。
「…ふぅ」
小さく呼吸して身を隠しながら進む。
部屋を覗くとあんなに美しかったダスト能力体がうなだれていた。
彼女もまた溶けたように形が崩れていた。
お香の効き目があったみたいだ。
ダストが空気中に分散して、部屋がきらきらと光ってる。
勝負は…一瞬だ。
俺の能力には「ロストマンの名前」と「能力名」が必要だ。
生後3か月の赤ん坊が自分の能力に名前を付けているはずは無い。
本来ならその場合は能力名は必要ない。
しかし今回は俺が勝手に「プラグイン・ベイビー」と名付けた。
不安はあった。
なぜならお香の効果は、俺の能力にも影響がある。
俺の能力の精度も下がっている。
普通なら、近くに近づけば手をかざすだけで能力は発動する。
しかし今回はあの子に触れて直接能力を発動するしかない。
「…」
部屋を見渡すと、家中のものがドロドロと溶けている。
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