ep.3 たまにはミルクでもいかがです?

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おそらく小さなテーブルでもあったんだろう。 木の片足だけが残されて白いドロドロの中に倒れてる。 部屋の窓際にあるベッドに白石かずまが寝ている。 お腹いっぱいになって眠りについたのか… その向こう側でダスト能力体の女「プラグイン・ベイビー」がぐったりと頭を下げている。 俺は下半身だけ残された警官をまたいで部屋の中へ入った。 白いドロドロで足元が滑りそうになる。 「…ん?」 ベッドの横に…ある…ドロドロの塊… その下に…生身の女性の…足? まさか… 「!」 「おぎゃああっ!おぎゃぁっ!」 その瞬間、赤ちゃんが泣きだした。 俺はベッドへ視線を戻す。 そこにはまるで悪魔のような表情で、俺を見下ろす… 「プラグイン・ベイビー」がいた。 やばいッ! その表情は俺の気持ちを折る。 何も知らない赤子が「生きたい」という何にも勝る欲求を体現した能力。 なんの悪意もなく、ただ本能的に身に付けた能力。 …怖い。 『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!』 プラグイン・ベイビーが乱暴に俺に腕を伸ばす。 注射器を指そうとしているようだ。 しかし動きは遅い。 お香が効いてる! 「くっ!」 俺は横によける。 足が滑りそうになりながらベッドに距離をつめる。 しかし… 『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!』 プラグイン・ベイビーが俺の首をつかむ。 赤ちゃんから俺を遠ざけたいようだ。 けど俺も同時に泣いている白石かずまの目元を抑えた。 あとは能力を発動するだけだ。 一瞬触れた白石かずまの口の周りには… 白いドロドロが渇いてざらついていた。 『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!』 プスッ 「いッつ…!!」 やばい! 肩に注射器を刺し込まれたッ! いてぇッ…! だけど… 「白石かずま…貰うよ。君の『プラグイン・ベイビー』」 俺の能力は発動する。 酷い形相でにらむ女も、腕に刺さった注射器もすこしづつ光を失っていく。 『きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!』 「ロストマンの名」と「能力名」を言えば、俺の能力は発動する。 今回は身体のどこかを触れながら言う必要があった。
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