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おれが白石かずまの目元を抑えたのは…
ベッドの下で…上半身を失った母親を…
こんな…嘘みたいな現実を…
この子が見ないで済むように。
…
白石かずまから能力を奪った後。
駆け込んだ警察は目の前の現実を直視できないでいるようだった。
白石かずまはおそらく、母親からまともな食事を与えられていなかったのだろう。
身体に傷はなかったが、数か月分の排泄物を放置していたせいで、ひどい臭いを発していた。
「イノさん!平気ですか!?服が…」
俺の洋服の肩の部分が白いドロドロに変わっていた。
けど、そんなことはどうでもいい。
「平気です。それより保坂さん、これ…。」
「なんですか…」
俺はおそらく化粧台だったであろうモノを指差した。
鏡の部分は既に形を失っていた。
俺が指差したのはその前に大量に置かれているもの。
大量の…本物の注射器だった。
「注射器…ですか?」
「使用済みのものばかりです。消毒して何度も使ってたんでしょう。」
「覚せい剤か…何かですか?」
「知りませんよ、そんなの…」
自分の子供の前で…
何度も自分に注射器を使っていたのか。
『プラグイン・ベイビー』の女のモチーフは…注射器を刺す母親の姿だったようだ。
…
保坂さんは何度も俺に礼を言っていた。
何て言っていたか覚えてない。
俺はかなちゃんと余ったお香を車に積み込む。
「これでわかったろ?俺たちの仕事は…人間の嫌な所を見る事になる。」
「…」
「俺の能力によって…白石かずまはまた何かを失う。それが何なのかわかるのは…きっとまだ先の話だ。」
「…イノさん。」
「ん?」
かなちゃんは酷く落ち込んでいる。
そりゃ…そうだ。
今回の件は、正直おれも相当キツかった。
「かずま君は…自分のお母さんを…」
「…」
「憎んでいたんでしょうか…。」
床に倒れていた母親・白石美香の死体。
俺も…あんなものを見たら…そう感じてしまう。
「わからない。けど…白石かずまが殺したのは間違いないだろうね。」
酷い扱いをされていたとはいえ、あの幼さで母親を殺したのは事実。
それが本位であったのかは…俺には本当にわからない。
「失慰さん。」
お香を車に積み込んで俺たちがそんな話をしていると、後ろから保坂さんが話しかけてきた。
「今回の事件で大学に提出するための資料、必要と言っていましたよね。」
「え?はい…」
「よかったらこれ。」
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