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ep.4 たまには歌でもいかがです?
10月。
やっと気温が落ち着いてきたと思ったのにもう肌寒くなってきた。
服装も厚手になり、パーカーを着て丁度いい気温だ。
もう今年も2カ月で終わりか…。
何となくそんなことを考えながら研究室に入る。
「おはよう、イノ」
「おはようございます麻衣さん。あとかなちゃん」
研究室は麻衣さん用のデスクとテーブル。
ソファが1つ。
麻衣さんはデスクで書類整理をしているようだ。
かなちゃんは真剣なまなざしでテーブルの上に置かれたものを見ている。
テーブルの上には体重計が置かれており、その上には動物用のゲージが乗っている。
中には他の研究室から借りた実験用のモルモット・チビ子が入っている。
必死にニンジンをかじる姿がかわいい。
本当はニンジン良くないぞ。…お前モルモットだし。
かなちゃんはチビ子を見つめながらつぶやく。
「『ここにいて』」
かなちゃんがそうつぶやくと、チビ子の身体がうっすらと光る。
[4.7g]
体重計の数字が徐々に大きくなる。
「いい感じねかなちゃん。たいぶ能力を使う事に慣れてきたみたい。」
「ありがとうございます。」
『プラグイン・ベイビー』の一件から2週間。
かなちゃんは毎日、能力の練習をしてる。
平日も学校帰りに研究室に来てはチビ子を相手に練習してた。
「『ごめんね』」
チビ太がまたうっすらと光る。
体重計の数字が小さくなる。
「かなちゃん調子いいみたいですね。」
「いい感じよ。感情移入していない相手でも3倍から4.5倍くらいの体重にすることができるみたい。」
ロストマンの能力は意識や感情に大きく左右される。
無意識に扱っていた能力も「自分がロストマンである」と自覚してから使えば、その分力も増す。
しかし3倍か…
俺が受けた時はせいぜい体重を2倍くらいにする程度だった。
それだけでも移動に苦労したのに…
「すいません。いつも私の練習に付き合ってもらって」
「いいのよ。これも研究の一環だしね。かなちゃんかわいいし」
いつの間にこの二人は仲良くなったのだろうか。
女同士ってすぐに仲良くなれる生き物らしい。
「でもどうして急に練習なんてする気になったの?」
「…それは…」
かなちゃんは少し黙る。
「私も…イノさんの役に立ちたいなって…」
きっと『プラグインベイビー』の一件に思うことがあったんだろう。
俺は深く聞かないことにした。
「そっか」
「……はい」
トゥルルル
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