ep.1 たまには精神操作でもいかがです?

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「そして俺たちは君みたいな能力者のことを失った者…ロストマンと呼んでる。」 「…失った者?」 「そう。ロストマンになった者は、イコール何かを失った者なんだ。」  何か…と俺は言葉を濁した。  今の彼の姿を見れば失ったモノは明らかだったからだ。  もう歩くことの出来ない両足。  外で走ることのできない身体。  7歳の少年にとって、それがどれほど大きなモノなのだろう。 「俺は…君の能力を奪う事ができる。」 「…え…」  彼の表情が少しこわばった。  やはり能力には未練があるようだ。  俺に対する警戒のレベルが上がったのがわかる。 「俺もロストマン。そういう能力なんだ。君から能力を奪うことが出来る。君の両親はそれを望んでる。」 「…やだ。」 「そっか…」  ここまでは、想定範囲内と言うやつだった。  ロストマンの能力はほとんどの場合、自分の望みを叶えるためのモノが多い。  彼は1つ失ったけれど、その代わり能力によって何か望みを1つ叶えた。  それを奪おうとすれば、誰でもこんな表情になる。 「ならどうしようか。俺の意識を操ってみるかい?」  これは小さな挑発だった。  理由は彼の能力を見ておいた方が良いと思ったからだ。  ダストの活動を抑えるお香も部屋に充満してきてる。  さぁ、鹿野灯矢、君の能力を見せてみろ。 「出来ないよ、そんなこと…」 … … …  …え?  やべぇ。  やり方間違えたか? 「出来ないって…君の両親にやったみたいに、俺を操ってみればいい。」 「誰にでも出来るわけじゃないんだ。お医者さんとか、初対面の人には効かなかった。」 「そうなの?」  …つまり。  能力の対象者には条件がある…という事なのだろうか。  例えば血縁じゃないといけないとか…? 「そちなみに…能力を掛けることが出来た人を教えてくれるかな?覚えてる限りでいい。」 「えっと…お父さん…お母さん…友達のみっちゃん…あと婆ちゃん。」  血縁ではない…な 「でも…」 「ん?」 「お父さんには最近かからなくなってきたんだ…」 「それは…能力自体が使えないっていう事?」 「そういう時もあるし…かかってもすぐ解けちゃったり…」  能力が弱まってる…ということなのか。  そんな話聞いたこと無いが… 「お母さんには今でもかかるのかい?」 「うん。」  力が弱くなってるわけじゃないみたいだ。
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