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「そして俺たちは君みたいな能力者のことを失った者…ロストマンと呼んでる。」
「…失った者?」
「そう。ロストマンになった者は、イコール何かを失った者なんだ。」
何か…と俺は言葉を濁した。
今の彼の姿を見れば失ったモノは明らかだったからだ。
もう歩くことの出来ない両足。
外で走ることのできない身体。
7歳の少年にとって、それがどれほど大きなモノなのだろう。
「俺は…君の能力を奪う事ができる。」
「…え…」
彼の表情が少しこわばった。
やはり能力には未練があるようだ。
俺に対する警戒のレベルが上がったのがわかる。
「俺もロストマン。そういう能力なんだ。君から能力を奪うことが出来る。君の両親はそれを望んでる。」
「…やだ。」
「そっか…」
ここまでは、想定範囲内と言うやつだった。
ロストマンの能力はほとんどの場合、自分の望みを叶えるためのモノが多い。
彼は1つ失ったけれど、その代わり能力によって何か望みを1つ叶えた。
それを奪おうとすれば、誰でもこんな表情になる。
「ならどうしようか。俺の意識を操ってみるかい?」
これは小さな挑発だった。
理由は彼の能力を見ておいた方が良いと思ったからだ。
ダストの活動を抑えるお香も部屋に充満してきてる。
さぁ、鹿野灯矢、君の能力を見せてみろ。
「出来ないよ、そんなこと…」
…
…
…
…え?
やべぇ。
やり方間違えたか?
「出来ないって…君の両親にやったみたいに、俺を操ってみればいい。」
「誰にでも出来るわけじゃないんだ。お医者さんとか、初対面の人には効かなかった。」
「そうなの?」
…つまり。
能力の対象者には条件がある…という事なのだろうか。
例えば血縁じゃないといけないとか…?
「そちなみに…能力を掛けることが出来た人を教えてくれるかな?覚えてる限りでいい。」
「えっと…お父さん…お母さん…友達のみっちゃん…あと婆ちゃん。」
血縁ではない…な
「でも…」
「ん?」
「お父さんには最近かからなくなってきたんだ…」
「それは…能力自体が使えないっていう事?」
「そういう時もあるし…かかってもすぐ解けちゃったり…」
能力が弱まってる…ということなのか。
そんな話聞いたこと無いが…
「お母さんには今でもかかるのかい?」
「うん。」
力が弱くなってるわけじゃないみたいだ。
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