ep.1 たまには精神操作でもいかがです?

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 父親にだけ能力が効かなくなってきた…?  つまり父親にだけ耐性がついた…?  そんなことあるのか? 「そのことをご両親は知ってるのかい?」 「いや、知らないと思う。」 「そうか…」 「…」  …もしかして。 「最後に質問してもいいかな?」 「…うん。」 「君はその両足以外に、何を失ったんだい?」  病室を出ると座っていた数人が一斉に立ち上がる。  最初に俺に声をかけたのは母親だった。 「あの子は…灯矢は大丈夫なんですか?」  続いて父親が 「能力は奪えたんですか?」  これはとても言いづらい空気だ。 「結論から申しますと…ダメでした。」 「ダメでしたって…どういうことですか。」  父親は落ち着いた口調で、表情にはけして出さなかった。  しかしその言葉には怒りとも取れる感情が見てとれる。  否、聞いて取れる。   「彼の能力を奪うには、彼自身の許可が必要なんですよ。」  これは正直嘘だった。  俺が今考えた適当な能力の設定だった。  俺の能力を使わず解決できるならそのほうがいい。 「彼は能力を失うのを嫌がっていました。許可を得ることは出来ませんでした。」  それを聞いた母親はストンと椅子に崩れ落ちた。 「そんな…」  確かに彼から能力を取り去ることは出来なかったのは事実。  両親が『奪う』事を前提に話をしていたのも事実。  ただし俺が今やるべきことは彼から能力を奪う事では無い。  そういう意味で鹿野灯矢君は運が良かったと思う。 「今回は、俺の能力を使わなくても問題は解決するかもしれません。」 …  俺と鹿野灯矢の両親は待合室に場所を移していた。  彼をどうするか。その話をするためだ 「ロストマンから能力を消す方法は2つあります。」 「ひとつは俺みたいなロストマンによって能力を奪ったり、消したりする方法。」 「貴方のようなロストマンは多いのですか?」  たまらず父親が聞いて来た。  また俺とは違うロストマンでも探す気なのだろうか。 「割合的に言えば少ないですが日本にも一定数いますよ。俺も数人だけなら知ってます。」  二人とも目の前のコーヒーには一切手をつけない。 「そして2つ目の方法。それは失ったモノをもう一度手に入れるという方法です。」  ここで母親は、初めて俺の顔を見た。 「…失ったモノを…もう一度?」
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