ep.1 たまには精神操作でもいかがです?

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お父さんなんて…かまってくれないじゃないか。  遊びの予定も仕事が優先。  遊ぼうと言っても…「もう寝なさい」  何か見せに行っても…「もう寝なさい」 僕はただ、かまってほしかっただけだ。  車に飛び出したのもそうだ。  ゆっくり走っていたから平気だと思った。  まさか歩けなくなるなんて…  思わなかったんだ。  僕が入院している間、お父さんは一回しか来なかった。  その一回だって、お父さんが僕に発したのは 「もう寝なさい」  この言葉を聞いたとき 「あぁ、僕は邪魔なのかな」  そう思ったんだ。 … 「…う…や。…灯矢。」 その声で、僕は目を覚ました。 太く、強く、とてもよく知っている声。 僕にはまだ出ないしっかりとした声。 お父さんの声。 「…お父さん。」 なんだろう… もうあの専門家の人は帰ったのかな… どれくらい寝ていたんだろう。 眩しい…カーテンが…あいてる。 「超神戦紅ぺテルギオン。」 「…?」 僕の好きなアニメだ… 「好きなゲームはヴェルダークシリーズ。好きな食べ物はハンバーグと豆腐の甘煮、チョコレート、明太子。好きな女の子は同じクラスの香理ちゃん。」 「おとうさん?」 「好きなカードゲームはデュエルキング、青いデッキを使ってるんだったな。そうえば、好きな色も青色だった。」 「どう…したの?」 「好きな動物は犬とパンダ。好きなスポーツはサッカー、野球。」 「………。」 「まだまだあるぞ。赤みの刺身、神田屋のプリン、アイスクリーム、ゴラドンボール、ブケモン、限界ウォッチ…それに」 「……。」 「それに…お母さん。」 「…」 「お前の好きなものは何でも知ってる。」 お父さんは、足の動かない僕を強く引き寄せた。 そして優しく抱きしめた。 「お父さんもな。お前の母さんの事が一番好きだった。」 「…」 「けどな。今から7年前、母さんと同じくらい好きなモノができたんだ。」 「…」 「お前の一番好きな物は、俺じゃないかもしれないな。」 「…」 「でもお父さんの一番好きな物は…7年前、お前が生まれてからずっと…お前と母さんだけだ。」 なんで… 「愛している。」 やめて… そんなに…強く… 言葉が…涙が… お父さん… 僕も… 大好きだよ。 … 鹿野灯矢が起きた時、カーテンは全部取り去られていた。 田舎の夕焼けってきれいだ。 緑豊かな場所っていいもんだ。
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