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あと5cm
『同性婚を許したら日本は終わり』優しかった彼からそんな言葉が飛び出すとは思っていなかった。その瞬間に幻滅し、怒りを感じて迷いなく彼とは別れた。
それはもう昔の話。
あれから既に数年の月日が流れた。
忘れっぽい元彼は私となぜ別れたか...いや、私と付き合っていたことすら忘れているだろうか。
そんなどうでもいいことを考えながら仕事をしていた。
「なんであんなのと付き合ってたんだっけ...」
そう独り言を呟くと同時にスマホにメッセージが届いた。
通知音と共に画面に表示された文字を見て心臓が止まる
元彼:会いたい
別れてから一度も連絡を取っていなかったのでてっきりブロックされていると思っていた。
なによりこんなタイミングでメッセージが来るなんて...驚きを相手に悟らせないように返信する言葉を暫らく考えて送信した。
私:なんで?
…
そこまで返信に時間が空いたわけではないのにいつまでも返信をよこさない。
自分から話しかけておいて...こんなところも嫌だったな。
私には普段メッセージを送り合うような仲の友達はいない。
やりとりに慣れていないがためにメッセージを待つ時は通知が来たか気になって何度も確認してしまうので別の作業をしても大幅に効率が落ちてしまう。
イライラ半分呆れ半分で数十分も返信を待った。
元彼:寂しい
ああ。そうだ。付き合っていた頃は彼が寂しいと感じた時にしか私の相手はしてくれなくて、都合のいい道具にされているような感じがして私は嫌だった。
私:私は会いたくない。
そう返信して私はスマホをしばらく放置して仕事に集中することにした。
人付き合いが苦手で避けている私にはこの数文字のやり取りだけでいっぱいいっぱいでこれ以上会話を続ける自信もなかった。
なにより時間の無駄にしか感じなかった。
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