我ながら奇妙なことを言うとは思うのだが

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我ながら奇妙なことを言うとは思うのだが

 端的にいって、私は半妖だ。キメラといってもいいかもしれない。私はヒトの身体をもったタヌキなのである。  人間はまだ知らないようだが、タヌキとヒトの魂は互換しやすい。数ある生物たちの組み合わせのなかでも特に親和性があり、稀に器と合致しない魂で生まれてしまうことがあるのだ。  それでもって私は幼少期の記憶がほとんどない。父いわく私は昔からリアクションのない人間で、話を聞いているのか聞いていないのかわからず苛立ったことも多々あると言う。  それもそうだろう。そのころは魂と器の接触が著しく悪かっただろう時期だ。まともなやり取りを期待するのが間違っている。  タヌキは里に住むイヌ科の動物である。短足で木を上ることができる唯一のイヌ科らしい。猫と犬は祖先が同じで、犬は野にでて猫は森に残ったと聞いたことがあるが、タヌキはその点猫に近い。  そんな理由があるからかは知らないが、ともかくも私は猫に発情してしまったのである。そもそも私はタヌキであり、宿っている器は獣のものだというのに。
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