逃げるように県外の大学に来たはいいが……

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逃げるように県外の大学に来たはいいが……

 端的に言おう。猫の短編を書けと言うのは分かるが二千五百文字以内とは無茶を言うな……しかし過ちを犯すものが現れないよう一人でも多くの人間にこの文章が届く手段を択ばなくてはならなかったのだから仕方がない。だいぶ、端折る。私は留年した。  逃げるように県外の国立大学に進学したが、どうも身体が上手くいかない。ちぐはぐな機械仕掛けのようで、一方わがままな幼子(おさなご)のようで。朝には頭痛に呻き昼は身体が熱っぽく、夜は妙に目が冴えて疲弊した肉体を意味もなく動かした。  負のスパイラルってやつだろうか。雪玉を転がすように私は身体を壊し続け、とうとう講義にもろくに出られぬようになった。  三年から四年に進級するための単位が、あと数個足りなかったのである。  成績は下降した。サークルはやめてしまった。稼がねばならないから、身体を引きずってバイトにだけは出勤した。バイトはしんどかった。稼ぐためと割り切ってなんとか乗り切った。思うように身体が動かないのが辛かった。なにより、何もかもがモノクロの古い写真のように古びて見えた。  おわかりだろうか。  大きくあるべき姿から逸脱してしまった私は、本来の平衡点である場所に向かって、恐ろしく強い中心力を受けていたのである。  早い話が、私をあるべき場所に戻そうとした力は大学生活を破綻させようとしていたのだ。
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