29(承前)

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 晩秋の一週間が静かに流れた。  この時期に須佐乃男操縦者候補は全員が精子と卵子の凍結保存処理を受けている。男性士官の間で、それは笑い話だった。  タツオもテルやクニとよく冗談のネタにしたものだ。精液採取室はシャワーブースほどの小部屋で、ちいさな手洗いボウルとベンチがある。壁面には3Dホログラフのプロジェクターとキーボードが装備されており、男性士官は無限にある過去の名作アダルトフィルモグラフィーから好きな作品を選べるのだ。この時代は「須佐乃男」操縦者候補だけでなく、軍人の精子凍結保存は一般的だったから、設備は至れり尽くせりである。  夕食のあとのカフェオレをのんでいると、クニに聞かれた。 「なあ、タツオはなにをおかずにした」 「普通のだよ」
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