29(承前)

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今度はグラスのなかから氷をとって、ジャクヤに投げつけた。 「シスコンいうな。でも、まあ、姉ちゃんのためなら、命をかけて戦う覚悟はあるよ。男ってそういうものだろ。なにより守りたいのは、家族だからな」  テルが真剣な顔でいう。 「日乃元の国とか、同期の仲間でなく、家族なのか」  ふざけ散らしていたクニの表情が変わった。テルに負けないほど真顔になる。 「ああ、すまないが、おれの場合は家族が一番だ。おまえらも、進駐軍も、日乃元も二番手だよ」  ジャクヤが口をはさむ。 「ぼくの場合は、自分が一番やな。同期も、軍も、国も二番手なのは、クニと変わらへんね」  テルがぼやいた。 「おまえにはきいてない」
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