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「何で学校辞めちゃうんだよ!?」
「……ごめんね、なかなか言えなくて……。」
重たい沈黙が二人を包む中、彼女はゆっくりと桜の木に近づきそれに触れた。風と共に舞い落ちるピンク色の花びらが、まるで彼女の旅立ちを祝っているように見えた。
「でも、俺連絡するから……。」
そう言いかけたが、微笑む彼女を見て言葉が出なくなった。そんなことしなくていいよ、そう言っている気がした。
「桜綺麗だよね。私春が大好きなんだ。でも出逢いと別れの季節とは、本当だよね」
「…………。」
別れたくて別れるわけじゃない。何でこんなことになったんだろう。初めて好きになり、付き合った人だった。まだ、これからだろ?
「……ねぇ、約束しない?ほら、よくあるでしょ。例えば、十年後の今日またここで会うとか」
「何だよ、それ。十年後って……。」
それまで、会わないつもりなのかよ。立花にとって、俺……。
「杉原くん、約束して。十年後の今日、三月三十日この桜の木の下で会おう。最後は笑って……別れよう?お願い」
そう言って笑う立花の姿は、涙で歪んでよく見えなかった。
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