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「こんな高価そうなホテルで、本当によかったの?」
ドレスから清楚な白いワンピースに着替えた静香は、タクシーを降りるなり不安げな顔で呟く。
「白無垢だけじゃなくて結局ドレスも着ちゃったし、お花代もかなりかかったし、今日だけですごい出費だとおもうんだけど……」
「萎えること言うなよ。いいだろ、今夜くらい」
華奢な肩に腕をまわすと、静香が怯えたように身をすくませる。
そんな仕草のひとつひとつが、俺には可愛くてたまらない。
「随分緊張してるな、奥さん」
「だって……」
式が終わり、号泣する静香のお義父さんとも別れ、俺達は今、街で一番でかいホテルの前に立っている。ちなみに予約した部屋は最上階。
俺の仕事の都合で当分新婚旅行に行けそうもないから、これぐらいの贅沢は許容範囲だろ。
「でもスイートにする必要はなかったかもな? どうせベッドしか使わねーし」
「そういうこと言わないで……」
「なんだよ。ベッド以外でもチャレンジさせてくれるの? それはそれでありがたいけどな」
「蒼さん!!」
静香は赤面すると、俺の口を塞いで辺りを見回す。
あんまり調子に乗り過ぎて機嫌を損ねると特別な夜が台無しになりそうだから、いじめるのはこれくらいにしておくか。
それに正直に言えば、ベッドまで待てる自信もそれほどない。
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