花見酒

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ーー土手沿いの桜並木は少し早い満開だ。 ニュースで週末の満開情報を聞いた私は、 日中の仕事を投げ出して一足早く花見へと来た。 「いやぁ……。平日はいいねぇ。ごみごみしていなくて。」 手に持つレジ袋の中ではワンカップがカチャカチャと音を鳴らしていた。 「週末には人がごった返すだろうな。」 今話題の裁量労働制で働く私は、 平日の時間を自分の裁量で花見の時間へと変えたのだ。 私は人影のまばらな土手沿いを歩きつつ 立ち並ぶ桜の中から見頃の物を品定めする。 桜は一本一本個性があり様々な顔を覗かせていた。 傲然と咲き誇る物や、気後れした少年のような物、 はたまた夜の蝶を思わす物など、見ていて飽きない。 そのうちから一本、華やかでこそないが決して貧相でもない桜が 私の目についた。
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