花見酒

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「いい風ですねぇ。」 ふと、背後から温かみのある声をかけられた。 振り返るとそこには落ち着いた色合いの和装に身を包んだ 老齢の女性が立っていた。 「この時期の風は暖かくて、本当、気持ちいい。」 「そうですね。 この季節ならではの楽しみですね。 それに、その風に舞う花びらもまた美しい。」 饒舌になった私は平時なら赤面してしまいそうなセリフを口にしていた。 「あらあら、素敵ねぇ。」 老齢の女性は嬉しそうな顔をすると おしゃまな女の子のような所作でちょこんと座り、 桜の枝が伸びる空を見上げた。 「お日様も笑顔がいっぱいねぇ。」 まるで私の語調にあわせるように 老齢の女性も微笑ましい言葉を使う。 その様相になんとなく嬉しくなった私は レジ袋からワンカップを取り出し、女性に差し出していた。 「どうです、一杯。」
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