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「どうした、お腹痛いのか?給食でなにかダメだったものあった?」
「ち、違うっ。お腹なんかいたくない。お腹より、胸っ!」
「はぁ?」
「まこちゃんは、まだ子供だからわかんないんだよ」
「なんだよそれ。俺ももう小6だから大人だってば。稔の方が子供だろっ。ちっちゃいし、可愛いし」
そういうと、また真は稔の髪の毛を触ってくる。
稔は、髪の毛を触っていた真の手を振り払って、逃げるように家まで全速力で走った。
そして、部屋のドアを開け、ランドセルをベッドに投げ肩で息をする。
「まこちゃんは、なんにもわかってない。僕より考えが子供だから。僕はまこちゃんが一番ってことも、一番大好きってことも。だから残酷なんだ」
「知ってるよ。稔が俺のこと好きなの。でも、俺も稔のことが好きだってのは、お前知ってんの?」
声のするドアの方へ稔は振り返る。
そこには、汗だくで息も絶え絶えになっている、目を細めて優しい笑顔をしている真が立っていた。
「まこちゃんが、僕を好き?」
「じゃなきゃ構わないだろーが!それに一緒にずっといないだろ。俺だってお前の事が大切なんだよ」
―――あの桜の木の出来事から23年。
35歳になった今、小学校の同窓会でタイムカプセルを開けるらしく、まこちゃんとの関係が変わったここで待ち合わせをした。
「みのるー!」
桜の木の幹を触りながら当時を回顧していた稔は、真の声で現実へ引き戻された。
真が、あの時と同じような人懐っこい笑顔で手を振っている。
年を重ねてもお互いがお互いの一番という事実はあの時から変わってない。
この先もずっと変わらないんだろうと思いながら、愛しい真にはにかみながら手を振った。
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