愛される自信を君にあげる

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 短大を卒業して社会人になって二年も経つのに、こんなまともに会話もできない子だったんだって、絶対に思ってる。  三条課長にだけは、可愛くなくても仕事ができる子だって思われたかった。  会社なのに一人でパニック起こして、三条課長が何の用で話しかけてきたのかとか考える余裕もなくて、ダメダメ過ぎて涙がでてくる。  泣き顔なんか見られたくないから、顔がどんどん下を向いていく。  白い廊下にポタッと涙が一つ落ちたところで、ボサボサの髪の毛にポンと重みを感じた。 「……?」 「うん、やっぱり……白崎さんって可愛いよね」  髪に触れたのは三条課長の大きな手のひらだった。  いい子いい子って髪の毛を撫でるから、ボサボサで艶のない髪はますます横に広がっていく。 「や、や……やめて、ください」 「ごめんね? 嫌だった?」 「嫌とかじゃなくてっ! 三条課長の綺麗な手が汚れちゃうからっ!」  誤解されたくなくて、気づいたらそう叫んでた。  驚きに目を見開いて、ポカンと口を開ける三条課長の顔を見たのは、あたしが初めてかもしれない。 「……っ、ははっ……あははははっ!」 「うぇっ? な、なにっ? すみませんっ、あたしなんか変なこと言いましたかっ?」  多分……ついでに言うと、爆笑してる三条課長を見るのも、あたしが初めてなんじゃ。     
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