愛される自信を君にあげる

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 でも、もうそれどころじゃない。  あたしは一体何をしてしまったんだろう。 「いや、ごめっ……ごめんね? 話には聞いてたんだけど……何度か挨拶したことあったし、まさかこんな……」 「こ、こんな?」 「うん、こんな可愛い子だとは思わなかった」  夢を見てるのかもしれない。  あたしにとって都合のいい夢。 「うそ……うそだぁ」  お決まりでギュッと頬をつねったら、当たり前だけど痛くって。  頬をつねるあたしの手を男らしい長い指が包んだ。 「ココ、赤くなってる。ダメだよ?」  手が頬から離れたら、赤くなったところを人差し指がスルッと撫でる。  見せてと端正な顔が近づいて、昼食前に話しかけられたことに感謝したいぐらいだ。  ラーメンとか餃子とか大好きだけど、今日だけはお腹が鳴ってでもネギの匂いをさせてなくてよかった。  歯を磨いたあと、匂いをマスクでごまかしてなくて本当によかった。 三  ふわりと香るネギとゴマ油の匂い。  接客業だから、お客様との打ち合わせの予定がない日が限定だけど、あたしにとってはここに来るのは社会人になってからの楽しみだった。  床は油で汚れていて、カウンターとテーブルが二組の狭い店内。     
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