愛される自信を君にあげる

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 ランチから帰ったら、速攻で消臭剤を社服にかけなければならない。  周りに臭いと思われないように、歯磨き後のマスクも常備──つまり、そんな場所にどうして三条課長と一緒にいるのかってこと。 「あ、の……今日、担当してらっしゃるお客様の披露宴は……」  今日は平日ということもあって数は少なかったが、午前中に一件だけ披露宴があった。  午後は夜も含めて披露宴会場の予約が入ってないことは確認している。  つい聞いてしまったのは、話が続かなかったからとか、そういうわけではない。  突然何が食べたいかと聞くからラーメンと答えてしまっただけで、こんな予定ではなかった。  しかも、まさか三条課長がラーメン食べに行くとか思わないし。  カウンターに並んで座っている今の状態を想像すらしていなかった。  ラーメンっていう料理をもしかしたら知らないかもしれないって、結構濃いめの味で、ネギがいっぱい入ってて、フォークとナイフは出てこないんです。  午後にお客様との打ち合わせがあるなら、控えた方がいいですよって言いたかった。  なのに、とうの三条課長は目の前に出てきたラーメンに目を輝かせて、箸を綺麗な所作で割ると、ブランド物スーツであることも気にせずにラーメンをすすった。     
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