愛される自信を君にあげる

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「うん、ほんとだ。美味しいね」 「美味しい、ですか……」 「あ、スーツなら大丈夫だよ。午後も打ち合わせあるけど、着替え置いてあるし、シャワー浴びるから」 「シャワー……」  どこでと疑問が顔にでていたのか、柔和な笑みを浮かべた三条課長がいたずらっぽく瞳を細めて、あたしの耳元に顔を寄せた。  内緒話でもするみたいに潜めた官能的な声が、耳から脳内へと広がっていく。 「ああ、よかったら白崎さんも使う? 父さんの執務室シャワールームあるからさ。たまに使わせてもらってるんだよね。でも、他の人には内緒ね」  人差し指があたしの唇に触れた。  同じ食べ物を口にしてるとは思えない。  だって、三条課長からはすごくいい匂いがした。  ラーメンのネギの匂いなんてかき消すぐらい、爽やかで清潔そうな香り。 「つ、つっ……使いませんっ」  いつもここで食事をする時はラーメンのことしか考えない。それぐらい後を引く味付けだから。  なのに、今日に限ってはせっかくの美味しいスープの味も、まったく感じられなかった。  なんとかどんぶりいっぱい食べ終わって、隣をそっと見つめれば食べるところを見られていたのか、とっくに食べ終えていた三条課長と目が合った。     
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