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「ね、やっぱりキミに決めた。協力してくれないかな」
その言葉に、麗を思い出した。
三条課長も今までの人生で、自分の思い通りにならないことなんてなかった人だ。
あたしが断らないって自信満々の笑顔が向けられる。
こんなの……憧れの大好きな人にこんな風に笑われたら、何だってしてしまう。
何を協力すればいいのかも聞いていないのに、気づいた時には頷いていた。
四
──麗から、聞いてるんだよね?
三条課長の話はこう始まった。
麗の名前がでたことで、思い出すのはもちろん結婚の話。
まさか、あたしと三条課長が結婚するなんて、本気にするはずもないけど、協力って一体何をすればいいんだろう。
「結婚の話……ですよね」
場所が場所だけに、あたしは落ち着きなく膝の上で両手のひらをこすり合せた。
今まで入ったこともない役員専用の執務室。
彼のお父さんである、三条専務が仕事で使う部屋だ。
どうして会社の上層階に位置するこんな場所にいるのかって、やっぱりシャワー浴びたいからと連れてこられたためだった。
もうとっくに昼休みは過ぎている。
仕事に戻らないと、なんて上司である三条課長に言えるはずがない。
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