愛される自信を君にあげる

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 恋人のフリでも、婚約者のフリでも、もうなんでもします。  だって、ほんのひと時だけでも、三条課長の恋人になれるって夢が叶う。  きっとこんな日は二度と来ないから。 五  少し待っててと、三条課長は執務室の奥にある部屋へと入って行った。  微かにシャワーの音が聞こえてくる。  午後は打ち合わせが入っていると言っていたから、そのために着替えるんだろう。  あたしも、上司の許可を得ているとはいえ、いつまでもここにいるわけにもいかない。  一月後に披露宴を控えている担当のお客様の、席次表や生花の手続き、料理に間違いがないかを確認しなければならない。  一生に一度のこと、まあ一度とは限らないのは悲しいかな本当のことだけれど、この仕事があたしに合っているなと思うのは、失敗は許されないけれど、全員を笑顔で見送ることができることだ。  悲しい顔をして式場をでる人はいない。  新郎新婦もその家族も、みんなが嬉しそうに笑いあってこれからの新生活に心を躍らせている。  今日は本当に楽しかった、ありがとうと言われることも多い。  そのたびに、土日だって休みはないし、夜も遅いけれど、緻密な打ち合わせを重ねて今日を迎えることができてよかったと、あたし自身の頑張りを認められたように思うのだ。     
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