愛される自信を君にあげる

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 信号待ちをしていると、大型トラックのタイヤがアスファルトを擦る音が聞こえる。  電話口からも同じように車の音が聞こえたような気がして辺りを見回すと、突然背後から温もりに包まれて電話が切られる。  胸の前に回された腕、見覚えのある綺麗な長い指。 「ひゃっ……」 「笑留」  驚いて身体を硬直させるあたしを宥めるようにかけられた声は、三条課長のものだった。 「び、びっくり……します」 「あはは、ごめんね。前を歩いてるのが見えたからさ。つい、嬉しくて驚かせちゃった」  すぐに離れていくと思っていたのに、三条課長の腕はあたしの胸の前に回ったままだ。  会社から近いこんな場所で、他の人見られたりしたら。 「あの……離さなくて、いいんですか?」 「ん? 離したくないなって言ったら怒る?」 「怒りませんけど、困ります」 「それはどうして?」 「だって、誰かに見られたら課長が困るし……」  あたしもドキドキして死んでしまいそうなんです。  顔に熱が集まって、ジワジワと汗が吹きでてくる。  汗くさいとか思われてたら、どうしよう。 「俺は困らないから、もう少しこうしてていい? ね、笑留……できれば、こっち向いて」  身体を反転させられて、三条課長の胸に顔を埋める体勢になる。     
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