愛される自信を君にあげる

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 麗が顔を隠すように眼鏡をかけるのは、以前に担当するお客様である相手から告白されてからだ。  結局、その二人は別れを決断し披露宴は取りやめになった。  会社としては大事なお客様を失い、麗は自分の顔が業務に支障をきたすことを知り、仕事中は黒縁眼鏡に長く艶のある髪を後ろでアップにするようになった。  それでも美人であることを隠せるわけではないが、以前よりかは少しはマシだと本人は言う。  美人は美人で苦労するみたいだ。 「あっ、ねえねえ、英臣とどう?」 「……っ、ゲホッ、何、突然……っ」 「突然って、あいつ何も言ってこないけど付き合うことになったんじゃないの?」  正確には〝恋人のフリ〟だけど。 「そう、なるのかな……」 「ふうん、よかったじゃない。あたしには英臣の男としての良さは全然わかんないけど、笑留ずぅーっと好きだったもんね」 「はぁっ? な、何言ってっ!」 「気づいてないと思ってた? わかるわかる! だって笑留、英臣の前だと女の子なんだもん。顔赤らめちゃってさ~」 「か、からかわないでよっ」 「からかってなんかないわよ? 本気で、笑留と英臣にはうまくいってもらわないと困るし」 「困る?」 「笑留だっていやでしょ? あたしと英臣が結婚したら」 「そんなことない……けど。あたしは……麗が幸せなら……」  嘘だ。     
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