愛される自信を君にあげる

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「何を考えてるの?」  一緒に帰ろうと連絡をもらって、三条課長と一緒に歩いているところだった。  ぼんやりと物思いにふけっている場合ではない。  キスのことを思い出せば普通に喋ることもできないからと、つい考え込んでしまった。 「ごめんなさい……何でもないです」 「謝ってほしいわけじゃないよ? ただ、笑留が悲しい顔してたから、気になっただけ。ね、もう遅いけど、ちょっとだけデートして帰ろっか」  キュッと手を握られて顔に熱がこもる。 「デート……」 「うん。こうやって一緒に帰るのも、デートっちゃデートだけど。今日はちょっとだけ寄り道」  三条課長に連れてこられたのは、落ち着いた雰囲気のあるバーだった。  薄暗い店内はカップルのお客さんが多いが、ひっそりと静かだ。  流れるジャズの音と、ヒソヒソと小さな声が時折聞こえる。 「お腹空いてる?」 「少しだけ」 「苦手なものはある? お酒は飲める?」 「特にないです。お酒は、ちょっとなら」  カウンターのスツールに腰掛けて、三条課長はバーテンダーに注文を入れる。  少しして目の前に置かれたグラスはオレンジジュースのようだった。 「カンパリ・オレンジ。飲みやすいよ」     
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