愛される自信を君にあげる

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 遠回しに周りがそう言いたいことも理解していく。  確かに、あたしのお父さんは驚くほどの美形だ。  彫りが深くハーフに間違われることも多いが、生まれも育ちも生粋の日本人で、マイペースでどこかぼんやりしてるお母さんに一目惚れしたっていうバリバリの恋愛結婚。  だけど周りはそう思わないらしい。  お母さんの家が名家なのかと囁かれたりもした。  お母さんはお父さんからの愛情をまったく疑っていないし、毎日のようにイチャイチャしてる場面を見せつけられたあたしとしても、二人が一緒にいることに違和感を覚えたりはしない。  ただ、何気なくお母さんに言われた一言が、ずっとあたしの頭の中にある。 「笑留がお父さんに似てたらねぇ」  お母さんまで、そんなことを言うの?  あたしがお父さんに似てたら、もっと美人で可愛くて、その方がお母さんもよかったの?  そう思ったら、自信なんて持てなくなった。  お母さんに似て、笑留は可愛いよ。  お父さんは今でも言ってくれる。  けど、ため息混じりに告げられたお母さんの言葉が消えてくれない。 「周りから言われるのには慣れてたんですけど、お母さんまでそう思ってたんだって知ったら、あたしの全部……否定されてるような気がしちゃって」     
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