愛される自信を君にあげる

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「あたしは、週に一度か二度、休みの時にまとめて作って小分けに冷凍しておきます。帰ってから作ってたら、深夜になっちゃいますよね」  三条課長が直接、新郎新婦と対面することはほとんどない。  人事部管轄の人材育成課の課長だからだ。  会うのはほとんど、人材派遣会社の社員か派遣されてきたスタッフだ。  彼らを教育し、当日の挙式披露宴に不備がないように進めるのが仕事で、あたしの担当しているお客様だけではなく、これから行われる披露宴のすべてが頭に入っていなければならない。  日中はスタッフの研修に、夜には人材確保や急な休みでこられなくなったスタッフの配置調整に時間を割かれる。  プランナーの仕事ももちろん忙しいが、聞けば帰宅時間はほとんど一緒だった。  たしかに、そんな時間から料理を作っていられない。 「三条課長は……」 「英臣、だよ」 「え……?」 「名前、言ってごらん」 「ひ、英臣、さん……」 「これから恋人として過ごす時間は、名前ね」  決定事項として告げられて、あたしは慣れないことにいっぱいいっぱいだ。  リビングのソファーで大人一人分の距離を開けて座る。  恋人なんだから、もう少し近づいた方がよかったのかな。  距離感すら量りかねて落ち着かない。 「笑留、今日どうしよっか」 「あ、はいっ」     
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