愛される自信を君にあげる

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 人様の幸せばかりを喜び、感動できる結婚式を作り上げるために土日の休みはほとんどなく、仕事で打ち合わせに来られないという新郎新婦のために夜は九時まで。自分より他人の幸せを祝う毎日では、結婚どころか恋人すら夢のまた夢に思えてくる。  せめて、外見だけでもたとえばおもちゃ売り場に並ぶミカちゃん人形みたいにスレンダーだったら。  せめて、読者モデルをしていた友人ばりに綺麗だったら。  あたしの世界も今とはまったく別であったかもしれない。  ショートカットに憧れはあるけれど、天然パーマのせいで髪は恒久的にロングヘアーに決まっている。何度もストレートパーマを試したため、色の抜けてしまった髪は湿気が天敵だ。  平々凡々な見た目のあたしの前にいるのは、まさしく学生の頃読者モデルをしていた、身長百七十オーバーの美女、滝川麗(たきがわれい)だ。 「で、英臣(ひでおみ)がさ、そんなの一人で行けば、とか超冷たいこと言ってくれちゃって! 幼なじみのくせに!」  ツンと尖らせた唇は艶めいていて、派手派手しく一歩間違えば品がないように思われる真っ赤な口紅を、麗は見事に使いこなしていた。たとえば、野暮な格好をしていたとしても、一流のハイブランドに思わせてしまう魅力が彼女にはある。     
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