愛される自信を君にあげる

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 三条課長が、応対するために玄関へと向かう。  あたしも慌てて後を追った。  どれだけ厳粛な雰囲気になるんだろうって実はビクビクしてた。  もちろん緊張はしているんだけど、醸し出す雰囲気が三条課長と瓜二つで、和やかに会話が進む。 「ふうん、英臣の押せ押せで付き合うことになったんだ。なんか、わかるなぁ。笑留ちゃん可愛いしなぁ」  白髪一つないブロンズの髪に、きっちりと締められたネクタイ。  新年祝賀会など会社の行事で壇上に上がる姿を見ることはあるが、三条専務と直接話すのは初めてだ。  五十を過ぎたあたりの年代だと思うが、優しげな風貌に育ちの良さも滲み出ていてモテないはずがない。  可愛いなんて言われて、思わずあたしも赤面しかけると、となりに座った三条課長がふて腐れたように口を尖らせる。 「笑留は俺のだから。父さんが可愛いとか言わないでよ」  憧れの三条課長が、三条専務の前だと子どもに見える。  ああ、親子なんだなって、ちょっと感動を覚えた。 「そりゃ、すまんね。一人息子だからとこれを甘やかして育ててしまったから、困ったことがあったら言ってね」 「い、いえっ……困ったことなんて……三条課長のおかげで、少しだけ自分に自信が持てるようになりました」     
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