愛される自信を君にあげる

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「ああ、模擬挙式と披露宴? 別に珍しいことじゃないでしょ? これがどうかしたの?」  結婚式場では、これから挙式披露宴を考えている人たち向けに、模擬挙式や披露宴を体験してもらうサービスがある。  模擬とはいえ、参列者役で実際にコース料理も試食することができる本格的なものだ。  どこの式場、ホテルでもやっていることで別段めずらしくはない。  薫が指差した紙は、メールでも案内が来ていたスタッフ向けのお知らせだった。  確か手の空いているスタッフは、一組ずつのお客様の対応のため参加するようにという内容だった。 「今回のモデル! 誰だと思う?」 「モデル? いつものブライダルモデルさんに頼むんじゃないの?」 「違うのよ! あの噂のふ、た、り!」 「噂の二人?」 「もうっ! 笑留ってば、本当にそういうの疎いんだから! はい! うちの会社で誰もが知るビックカップルと言えば誰と誰でしょうか?」 「え……まさか、三条課長……」 「ピンポーン!」  その後も薫が本番の練習になるね、とか美男美女で絵になるだろうなとか色々言っていたが、あたしの耳には入ってこなかった。  このぐらいのことで、ショックを受ける必要はないはずだ。  だって、三条課長と付き合ってるのは本当はあたしで、麗には別に恋人がいる。     
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